「トライアウト」について思うことがあります。
それは、一貫指導の育成において、「普及」「育成」「強化」の役割があるように、
トライアウトにも「育成」と「強化」があるはずです。
そこで「強化(プロ)のトライアウト」と「育成のトライアウト」の評価基準を、私なりに整理してみました。
強化(プロ)のトライアウトは、「一流の選手を見つける」ために、評価基準としては以下の5つが当てはまるのだと思います。
①身体能力とスキル・・・求められるポジションとしての即戦力、経験値
②人間力・・・魅力的な人間性(人としてのあり方、他人への振る舞い)
③理解力・・・瞬時に理解し、それを表現できる力(コート上はもちろん、人とのコミュニケーションでも活躍できる)
④最高の判断力・・・速いバスケットをする為には必要な力
⑤最高の判断に伴う高いスキル・・・高いレベルで結果を出す為には必要な力
その為、トライアウトの内容は5対5を中心に実施します。
与えられたポジションでその選手がどんな輝きを見せてくれるのかをチェックします。
また、ゲームの中での動きや流れを見て違うポジションでも輝けないかのチェックもしています。
大きなポイントは、チームにどこまでの貢献をするのかを評価していると思います。
なぜならプロのトライアウトの目的は、チームを優勝するために必要な人材を探しているからです。
育成トライアウトは、「一流の選手になれる原石を見つけ育てる」ために、評価基準として以下の5つが当てはまります。
①身体能力とスキル・・・飛び抜けている身体能力や即戦力になる選手もそうですが、身体能力や経験値が今足りなくても成長過程のため、全員が学べるようなものを提供しながら、子供たちが自ら自分の可能性や希望を持って挑戦できるような環境作りを心掛ける
②人間性・・・信頼できる人間性(傾聴力がある、又話を聞こうとする姿勢、向上心)
③理解力・・・理解しようとする姿勢、分からないことを聞ける力、やろうとする姿勢
④判断力・・・遊び心をもってプレイする力
⑤表現力・・・学んだ事を挑戦しとうとする姿勢、自分で考えて行動する力
トライアウトの内容は、それぞれの個性を評価する為に、メインは5対5ではなく、3対3もしくは4対4を実施するといいと思います。
そこで今回は、私が実際に実践している「育成のトライアウト」をご紹介させてください。
私が愛知県U14DC女子で実践している育成のトライアウト
トライアウトは、このような内容と目的で実施しています。
①ウォームアップ・ダイナミックストレッチ
▶怪我予防と姿勢をやりながら伝える
②走力・体力チェック
▶きついorいやな事をどんな心で楽しむか、考え方を伝える
③3対3パッシング(判断力チェック)
▶ルールを設けて判断を絞り、判断とは何かを伝える
④3対3Liveハーフコート(スキルチェック)
※意識して欲しいポイントを3つ約束します。
1)強い/速いパスを意識する
▶評価ポイント:強いパスをすると、プレーの展開が速くなりボールをもらった瞬間のドライブの判断も速くなる為、それが出来る選手がどのくらいいるのか。
2)ドライブはキラーポイントへアタックする
▶評価ポイント:キラーポイントにドライブすれば、ボディコンタクトが起こるため、どんなシュートフィニッシュで戦っているのかor戦わないのか。
3)させないディフェンスを意識する(パスさせない、打たせない、抜かせない等)
▶評価ポイント:意識してディフェンスができているのか、身体の使い方など。
⑤3対3のスペーシング(理解力チェック):3対3の動きのドリルを使ってバスケットの考え方を指導
▶評価ポイント:話を理解しようとして聞いているか、聞いたことを意識して基本のドリルに沿って練習できているか、又、理解できない時にどのような取り組み方をして練習に参加しているのかなど。
《ドリル内容》
・パスした後の動き方
・ボールをもらうタイミングやディフェンスのおさえ方
・ドライブした時の逆サイドの合わせ方(スペーシングの基本)
・キックアウトした後のリロケイトの必要性(スペーシングの基本)
・ドライブがいけない時の考え方、その時の合わせ方(スペーシングの基本)
・それらの基本の動きから発展する応用の動きのアイディアを伝える
⑥3対3Liveハーフコート:勝ち残り(表現力チェック)
▶評価ポイント:学んだ事を挑戦しようとしているのかor好き勝手にプレーしているのか、学んだ事以上のプレーが出来ているのか等、やろうとする姿勢、又、それ以上の対応力、理解している選手同士がどんなコミュニケーションを取って一回一回を戦っているのか。
⑦クールダウン
このような流れで、育成のトライアウトを実施させて頂いております。
トライアウトの時に工夫していることが、2つあります。
1つは、トライアウトを受ける選手達とスタッフ全員に、一つ一つの講習内容の評価ポイントを必ず伝えます。(トライアウトなので始めは選手に伝えるか迷いましたが、育成なので学んで欲しいという目的を込めて堂々と伝えることにしました)
それからスタッフにも共有することで、同じ考え方で子供たちを評価するということ、又、指導者講習にも繋がるのではないかという目的でやっています。
2つめは、ハーフコートで3対3をする為、評価コートA,B,C,Dを設けます。(ここは子供たちには伝えず、私とアシスタントコーチとの間で評価チェックポイントをベースに状況をみて、ドリルを進めながら徐々に振り分けていきます)最後に、レベルを合わせたグループに振り分けた状態で、3対3のLiveを実施します。そうすることで、子供達がどんな力を出すのかを見れるため、評価もしやすくなっていきます。
私の個人的な想いですが、育成年代のトライアウトは、「日本代表になれる選手」というよりも、「(日本代表として)世界で活躍できる選手」を育成するビジョンを持ち、そのためのトライアウトをし、そこで選考された選手が、その後の講習会(年に8回程度)で、例えばボディコンタクトからのシュートフィニッシュやボールのもらい方、ディフェンスフットワークなどの技術的な事、又、スクリーンプレーやディフェンスのポジション、スペーシングなどの基本と理論、そしてバスケットボールの考え方等を計画的に取り入れていくことが、より良い育成に繋がるのではないかと考えており、愛知県U14/15DC女子で実施させて頂いております。(今年はコロナで3回ほど中止になってしまい、とても残念ですが)
今後の育成環境のビジョンとしては、
・スタッフにトレーナーを入れ、怪我予防や怪我したときの知識をつけてもらいたい
・もっとオープンに幅広い方々に見学して頂きたい
・講習会中は保護者も学べる栄養セミナーを設けていきたい
もう一つは、地区DCを配置し、もっと多くの子供たち&大人たちも成長できるような環境を広げること、又そこで、トライアウトに選考されなかった子供たちが学び続け成長できる場作り、その先成長することで、もう一度県DCに引っ張るチャンスを得る場にもなる、そんな育成環境のビジョンをもって、愛知県で取り組んでいきたいと思っています。
一番は、無限の可能性を持つ子供たちが、大好きなバスケットボールを通して人間力を磨き、人として世界で活躍できるような人間になれるような、そんな成長をサポートできるようにするのが目標なので、まずは自分が一番成長し続ける為に挑戦し、責任と覚悟を持って過ごしていきたいです。
私は、今のバスケアカデミーと愛知県U14/U15DCで、そのようなポジティブで心地良い環境づくりを目指して活動していきます!
私がなぜ強化と育成のトライアウトが別物だと思っているのか、次回は私がこれまで経験したプロのトライアウトを振り返って書いてみようと思います。
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